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渡辺真由子のメディア・リテラシー評論(旧)

渡辺真由子のメディア・リテラシー評論(旧)

同性間結婚 カナダで合法化 (アエラ)

AERA(朝日新聞社) 2005年11月25日号掲載

『同性愛にも寛容なカナダ 
   日・米からも移住相次ぐ』

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 休日の昼下がり。バンクーバーの自宅リビングでくつろぐエツコさん(48)の髪を優しく撫でながら、「妻」のジェーンさん(51)が緑茶を手渡す。
 カナダは今年7月、同性間の結婚を合法とした。日系3世の医師、エツコ・ジョイ・マスハラさんと、カナダ人の作家・写真家、ジェーン・イートン・ハミルトンさんは、一足先に達成したブリティッシュ・コロンビア(BC)州での合法化を推し進めたカップルだ。

 エツコさんとジェーンさんはそれぞれ男性と結婚していたが、離婚。カミングアウトを経て出会い、94年からジェーンさんと前夫との間の10代の娘2人も一緒に住み始めた。BC州で同性カップルの養子縁組が認められた97年、エツコさんは2人の養母になり、次第に娘たちもエツコさんを「お母さん」と呼ぶようになった。
 だが、長年暮らすジェーンさんとは他人のまま。異性カップルが交際期間半年やそこらで結婚していくのを見るのは、辛かった。
「相手を思う気持ちは異性愛者と変わらないのだから、法的な形で認めて欲しい」

 2人が他の同性カップルと共に、同性婚を認めるようBC州を訴えたのは2000年のことだ。当時同性同士の結婚は「道徳を破壊する」として、保守的な宗教界を中心に反対の声も強かったが、03年、州の控訴裁判所は同性同士の結婚を禁じるのは差別と認定。その1カ月前にはオンタリオ州でも、同性婚を合法とするカナダ初の判決が下されていた。BC州の結果を待ちきれなかった2人はトロントで急遽式を挙げた。

 いまカナダでは同性婚は、年金の受給や財産の相続に関する権利も異性間結婚と同等になった。
 隣のアメリカでは、04年に合法化したマサチューセッツ州以外の州で同性婚を禁止しているため、アメリカの同性カップルのカナダ移住が後を絶たない。移住まではしなくても、BC州で結婚証明書を発行してもらったアメリカ人は03年で802人。カナダ人の643人を上回る。

 同性婚を願って、日本からカナダに渡るケースもある。指圧師のマサルさん(仮名、28)は5年前、来日中だったカナダ人の男性(30)と付き合い始めた。帰国した彼を追って今春バンクーバーへ。9月、式を挙げた。最初は驚いていた両親も日本から参列、「一緒に頑張っていきます」という誓いの言葉には涙ぐんでいた。
 いつか夫と日本に住みたいとも思うが、その時は結婚していることを周囲には隠すつもりだ。
「皆が同じように生きなきゃいけないって思われている日本では、同性愛者は気持ち悪いと思われる。怖くてとても言えません」

 日本で大手のマスコミに勤めていたヒロトさん(仮名、32)が、カナダの大学院を留学先に選んだのは、こうしたカナダの自由な雰囲気に惹かれたからだ。日本ではごく信頼できる人にしか打ち明けていなかったが、カナダでは、素のままの自分でいられる。
「セクシュアリティの違いは身長や年齢の違いぐらいに捉えられているから、カミングアウトしても拒絶されない安心感がある」

 バンクーバーの非営利団体Asian Society for the Intervention of AIDS(ASIA)でエイズに関するカウンセリングなどを行うシンペイさん(28)は、日本人同性愛者はこの都市に100人単位でいるとみている。だが、
「ゲイコミュニティはたくさんあるけれど白人が中心。僕たちは参加しても冷たくされて、一段下に見られている感じ」

 エツコさんも、外出時に妻と手をつなぐのはいまだに躊躇する。アジア人の自分に向けて汚い言葉が投げつけられるからだ。
「法律は整ったけれど、同性愛者でアジア人であれば二重の差別が残る。偏見が取り除かれるまでには、まだ時間がかかるでしょう」


取材・文: 渡辺真由子


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